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大動脈瘤とは、大動脈(心臓から全身に血液を送る最大の血管)が異常に拡張した状態を指します。
正常な大動脈は強く弾力がありますが、壁が弱くなると血流の圧力によってこぶのように膨らみます。
この状態を放置すると、破裂や大動脈解離(血管の壁が裂けること)を引き起こし、突然死の原因となることがあります。
大動脈瘤が成長する過程において、自覚症状はほとんどなく、破裂とともに突然激しい痛みに襲われることから、別名”サイレントキラー”として恐れられています。
~大動脈瘤の原因とリスク因子~
大動脈疾患は突然死の重大な原因の一つです。特に、大動脈解離や大動脈瘤の破裂といった緊急性の高い疾患は、早期診断と迅速な治療が命を守る鍵となります。
しかし、これらの疾患は初期段階では自覚症状が乏しいことが多く、発見が遅れるケースも少なくありません。
そのため、症状の有無に関わらず、専門医による重症度の診断をうけることが非常に重要です。
このまま経過観察でよいのか、または手術治療が必要なのかという正しい判断を受ける必要があります。
大動脈瘤の大きさがまだ小さい場合には治療の必要はありません。定期的にCT検査を行い経過観察を行います。 日常生活に特に制限はありませんが、血圧の管理を含めた将来のさまざまな病気のもとになる生活習慣病に対する検査、治療はしっかりと行っていく必要があります。
ステントグラフトとは、金属製の支え(ステント)に人工血管を組み合わせた特殊な医療機器で、大動脈瘤を内側から補強します。
この治療では、脚の付け根(鼠径部)に小さな切開を入れ、カテーテルを使ってステントグラフトを瘤の位置まで運び血管の内側から大動脈瘤を塞ぎ、破裂を予防します。
開胸や開腹を必要とせず低侵襲な治療となるため、患者さんへの負担が軽いのが特徴です。
ステントグラフト内挿術では、太ももの付け根(鼠径部)からカテーテルを挿入し、大動脈まで進めてステントグラフトを配置します。開腹や開胸手術のような大きな切開が不要なため、術後の回復が早く、高齢者や他の疾患を抱える患者さんにも適応可能です。また手術時間も約1~2時間と短いため、患者さんの体力が温存されます。
従来の開腹開胸手術では、術後の入院期間が数週間に及ぶことが一般的ですが、ステントグラフト内挿術では入院期間が大幅に短縮され、早期に日常生活や仕事に復帰することが可能です。
ステントグラフト内挿術では鼠径部の小さな切開または針を刺すのみで手術を行うため、従来の手術のように大きなキズが残りません。
大動脈瘤の形状、大きさ、位置、血管の状態によっては、ステントグラフトを留置できない可能性があります。術前に造影CTなどで詳細に評価し、適切な治療方法を選択します。
ステントグラフト治療では、大動脈瘤自体は処理せず、大動脈瘤内にステントグラフトを留置する治療法ですので将来的に再発を来たす可能性があります。ただし再発の確立はそれほど高くないため、現在ではほとんどの患者さんに適応可能となってきています。
開腹または開胸による人工血管置換術は、大動脈瘤を直接的に切除し、切除した瘤部分に、特殊な素材で作られた人工血管を縫合し、大動脈の血流を再建します。人工血管は長期間の使用に耐えられるよう設計されています。従来から行われているこの方法は、瘤の破裂を予防し、長期的な治療効果が期待できる確立された大動脈瘤の根治手術です。
人工血管置換術では大動脈瘤を直接切除しますので、術後危険を残さない根治治療になる、これが一番のメリットです。
特殊な素材で作られた人工血管の耐久性は半永久的と言われており、途中で取り換える必要がありません。長期に渡って安全な血流が期待できます。
開腹・開胸により外科医が直接大動脈瘤を切除しますので、基本的に大動脈瘤の性状や大きさ、部位に左右されず、あらゆるタイプの大動脈瘤の治療が可能です。
開腹・開胸による手術侵襲(手術による体のダメージ)がやはり一番のデメリットになります。開腹・開胸を必要としないステントグラフト治療に比べれば、術後の体力回復には時間を要します。当院ではなるべく手術時間を短くして、お体へのダメージを最小限にするよう日々努力しています。
同様の理由で、ご高齢で体力に自信のない方や、重度の肺疾患や心疾患といった基礎疾患を有する方にとっては、手術を受けることによるお体へのダメージのリスクが、大動脈瘤を放置する危険を上回ってしまう可能性があります。これでは手術はむしろ害であり本末転倒です。その場合は、ステントグラフト治療を選択することで治療は可能となる場合がほとんどですので、あきらめずにご相談ください。
マルファン症候群は、結合組織に影響を及ぼす遺伝性疾患です。結合組織は体を支える役割を担う重要な構造であり、骨、皮膚、血管、眼、心臓など多くの臓器や組織に存在します。マルファン症候群では、この結合組織が正常に機能しないため、さまざまな身体部位に特徴的な症状や合併症が現れます。マルファン症候群は、FBN1遺伝子(フィブリリン-1遺伝子)の変異によって引き起こされます。この遺伝子の異常により、結合組織の強度が低下し、臓器や血管に負荷がかかりやすくなります。多くの場合、親から遺伝しますが、全体の20~25%は新しい遺伝子変異によって発症することもあります。マルファン症候群の症状は個人によって異なりますが、以下のような特徴的な症状がみられます。
マルファン症候群は、大動脈疾患による突然死のリスクが特に高い疾患として知られています。大動脈瘤や大動脈解離といった命に関わる疾患が、一般的な患者よりも若い年齢層で発症する傾向があります。特に20~40代の働き盛りの世代で突然死を引き起こす可能性があるため、早期診断と予防的な治療が極めて重要です。
マルファン症候群の患者さんでは、大動脈壁が通常よりも薄く柔軟性に欠けているため、血圧の負荷で次第に拡張し、瘤(こぶ)が形成されます。大動脈瘤が拡大し続けると、やがて破裂のリスクが高まり、突然死に直結する病態です。
大動脈基部と呼ばれる心臓の付け根がまるで洋ナシのように瘤化する「大動脈弁輪拡張症」という病態が、マルファン症候群には特徴的です。将来的に大動脈瘤破裂や急性大動脈解離のリスクがあるため、一定の大きさに達した際には予防処置としての手術加療が推奨されています。また本疾患では、大動脈弁輪の拡張による大動脈逆流を合併し、心不全を併発する可能性もあります。
急性大動脈解離は、大動脈の内膜が裂け、血流が大動脈壁の層間に入り込むことで発生します。この状態により、大動脈がさらに拡張・破裂したり、重要な臓器への血流が遮断される危険性があります。
特に、Stanford A型(上行大動脈に解離が及ぶ場合)の急性大動脈解離は、緊急手術を要する生命を脅かす疾患です。約9万人に1人の確立で突然発症し誰にでも起こる可能性がありますが、マルファン症候群の患者さんでは、この病気が比較的若い年齢で発生するリスクが高く、解離が起きると短時間で命を脅かす可能性があるため、この病気のことをよく知り、意識する必要があります。
マルファン症候群における大動脈疾患のリスクを最小限に抑えるためには、専門医による早期診断と適切な管理が欠かせません。
David手術は、大動脈基部瘤や大動脈弁輪拡張症に対する先進的な外科治療法です。この手術は、大動脈基部を人工血管で置き換える一方で、大動脈弁自体は患者さん自身のものを残すため、「弁を保存する」ことが大きな特徴です。大動脈弁の形状や機能が十分に正常な場合、人工弁を使用せずに治療することで、患者さんにとって多くのメリットを提供します。特に、抗凝固療法(血液をさらさらにする薬の使用)が不要となるため、術後の生活の質が大きく向上します。この術式は、高度な技術を要するため、専門的な訓練を受けた心臓血管外科医と、経験豊富なチームによる慎重な判断と手術が求められます。
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